徹底解説!BTS「花様年華」のストーリー

花様年華BTS
公式Youtubeミュージックビデオより

こんにちは!さこまよ(@SacchanOT7)です。
今回は、BTSの楽曲を語る上では避けて通れない「花様年華」のストーリーについてご紹介します。

花様年華のストーリーを軸に展開される数々のBTSのミュージックビデオやショートフィルム、CDなどに付属する「NOTES」、ウェブトゥーンなどの物語は全てリンクしており、壮大なメッセージが隠されています。

この、花様年華のストーリーは、2015年「I NEED U」に始まり、2020年「MAP OF THE SOUL:7」まで続いた(MAP OF THE SOULで完結した)と一般に思われていましたが、いまだにビッグヒットから供給される数々のコンテンツには、どうも花様年華を連想させるものが存在します。

しかし、この花様年華のストーリーを理解するには、ヘルマン・ヘッセの小説「デミアン」やアーシュラ・ル=グウィン「オメラスから歩み去る人々」などの文学作品やギリシャ神話、ユング心理学、ジェームズ・ドティ「Into the Magic shop」の書籍などの元ネタ(ビッグヒット側が元ネタとして言及)を理解している必要があります。

今回は、これまでの花様年華の展開を簡単にわかりやすくまとめてみます。

世界中のARMYによって解読され、周知の事実として共有されている通説がある

花様年華のストーリー(英語では、”Bangtan Universe”)は2015年以降、世界中のARMY(BTSのファンダム)により解読され、ARMYの中で共有されています。既に考察され尽くしている部分があるため、大まかな流れは”通説”として定着しています。
英語のリンクになりますが、本項の文末に貼っているものが、関連ミュージックビデオの見るべき順番や、通説をまとめた代表的なものです。
本記事は、その通説に則り、通説の順にMVを見て、自分なりに再解釈したものになります。
ARMYの考察文化に触れられたことがある方ならお分かりかと思いますが、基本的なストーリーは他の考察の余地がないところまで解読されていますので、それに関しては周知の事実として扱っています。
通説に立った上で、そこから得られた所感、BTSの伝えたいメッセージの考察、本記事で扱う個々のミュージックビデオの解釈については、ビッグヒット側が元ネタとして言及している小説やユング心理学の書籍などを読んだ上での私独自の解釈となります。

また、歌詞や、メンバーの発言にはクォーテーションマークなどを付けて区別していますが基本的に全て私自身が記載している文章になります。

参照した通説まとめ(英語サイト)

http://bucontentgui.de/
https://bts.fandom.com/wiki/BTS_Universe

「花様年華」とは

そもそも「花様年華」とは、元は2000年に製作されたウォン・カーウァイ監督の香港映画のタイトルとして有名で、「人生で最も美しい瞬間」を意味します。
以前、RMはツイッターで「人生で最も美しい瞬間」に加え「青春」という意味も付け加えています。

また、先日放送されたバラエティー番組「You Quiz on the Block」の中で、RMは「毎瞬間、最後のように」という言葉とともに、「花様年華」という言葉を添えています。

さらに、アルバム「花様年華Young Forever」に収録されているRMの作詞した曲「Epilogue:Young Forever」の中の歌詞では、「いつまでも僕のものにはできない大きな拍手喝采」や「完ぺきな世界なんてありえない」といった歌詞が印象的です。

今、BTSがまさに駆け抜けていて永遠のものではない「花様年華」という哲学を、象徴的なストーリーとともに視聴者にメッセージとして訴えかけるとともに、青春を経て大人になる過程で生じる葛藤、という2つの軸があるのではないかと思います。

以下で説明する「花様年華」のストーリーは、架空のストーリーなのですが、そこから読み取れるメッセージには、アイドルとしての彼ら自身の経験や思い、哲学が込められていると考えられます。
また、誰もが成長する過程で経験する「子供」から「大人」になる過程の葛藤や苦悩、成長するにつれて見えてくる人生の嫌な部分と向き合い、折り合いをつけるプロセスを描いており、私たちの共感を呼ぶものとなっています。

花様年華期のミュージックビデオ

花様年華のストーリーは2015年リリースの「I NEED U」から始まります。

以下の順番でミュージックビデオとショートフィルムをご覧ください。

  1. 「I NEED U」ミュージックビデオ
  2. 「花様年華 on stage:prologe」ショートフィルム
  3. 「RUN」ミュージックビデオ

最初、ばらばらに見ていた時は分からなかった繋がりが見えてきます。
特に、「Prologue」のラストから「RUN」の冒頭のシーンは繋がっていますね。

ざっくりいうと、7人それぞれが何らかの問題を抱えている描写が出てきます。
印象的なのは、以下のシーンです。

  • テヒョンが父親を刺してしまう
  • 自殺をほのめかすメンバー
  • 車にひかれそうになるジョングク
  • 海で戯れる7人
  • テヒョンが海に飛び込む
  • カメラを撮るジン

またこの3つの動画を通じて、時系列が行ったり来たりしていることがなんとなく分かります。

さらに、日本版「I NEED U」ミュージックビデオでは「百合の花が燃える」描写が印象的です。

また、日本版「RUN」のミュージックビデオからは、不安そうにするジンの表情が印象的でジンが何かのカギを握っているのではないかと推察されます。

結論から言うと、上記の映像は以下を表しています。

  • 海で遊ぶシーンはまだ何も知らない、楽しかった時代
  • メンバーそれぞれに事情を抱えていて、逮捕されたり、自殺をしたり、親を殺したりする
  • ジンは百合の花を燃やしてタイムリープを行い、楽しかった時代に戻り、悲劇的な未来を変えようとする

WINGSショートフィルムと血汗涙

WINGS

次に、WINGSショートフィルムという7編の短編の動画を見てください。
メンバーごとにテーマがあり、それぞれの心の闇や過去を掘り下げたショートフィルムになっています。

このショートフィルムは、公式から出ているコンセプトとしては、ヘルマン・ヘッセ「デミアン」の小説をもとにしているとのことです。
「デミアン」は「誘惑に出会った少年の葛藤と成長を描く」物語で、このコンセプトをもとにストーリーが展開していきます。

WINGSのアルバムと同じ順番でショートフィルムが展開されます。

  1. Begin
  2. Lie
  3. Stigma
  4. First Love
  5. Reflection
  6. MAMA
  7. Awake

これらのショートフィルムと、先ほど述べた「花様年華」期のMVの描写はいくつかリンクしているため、花様年華のミュージックビデオの中で断片的に描かれたメンバーの苦悩を、象徴的に表していると思われます。

wings

WINGSショートフィルムBeginより

また、ショートフィルムの最後に4つ卵のようなマークが出てきますが、これは「デミアン」の中にも出てくる「卵」で、「ここから生まれ出ようとするには、一つの世界を壊す必要がある、そして、鳥となって神(アブラクサス)のもとへ飛んでいく」ことを象徴していると言います。(アブラクサスの描写は、WINGSショートフィルムを全編見ると随所に出てきます)

また、鳥になる=成長することは、明るい側面だけでなく、人生の嫌な面・暗い側面を両方兼ね備えていくこと、も意味します。(アブラクサスは誰かにとっては悪魔、誰かにとっては神、と言われる)
つまり、青春から抜け出し、成熟する過程を表してもいます。
成熟する過程では羽が生え、「成長痛」が伴い、それを経て大人になっていく様を描いていると言えます。

wings

WINGSショートフィルムBeginよりー羽が生えるジョングク

血、汗、涙

一方で、WINGSのアルバムに収録されている「Boy meets evil(悪魔に出会う少年)」もカギを握っていると思われ、次の「血汗涙」とこのWINGSショートフィルムをつなげる理解としては、悪魔の誘惑に誘われ、「自分の世界を壊す=成長する」ことが描かれています。

そして、次に見るべきが「血汗涙」のミュージックビデオ。
これは、ギリシャ神話、エジプト神話を理解したうえで見る必要があります(汗!)。
メンバーそれぞれ、ギリシャ神話に出てくる神々になぞらえられており、ジンが冒頭で見ている絵はブリューゲルの「反逆天使の堕落」という作品。
「反逆天使の堕落」は、「高く飛ぶな」という教訓を無視して飛んだイカロスが太陽に向かい高く飛びすぎて蜜蝋が解けて海に落ちて死ぬ、様子を表しています。

血汗涙

血汗涙ミュージックビデオより

ミュージックビデオではメンバー全員が悪魔の誘惑に誘われていく様子が描かれています。細かく言うと、ミュージックビデオの後半で羽が生えるテヒョン(悪魔)がメンバーを誘惑し、最後まで抵抗したジンまでも、悪魔の誘惑に誘われます。(「キス」は悪魔との契約を意味する)
なお、ジンが抵抗をしている様は、目隠しをされている様から分かります(現実を見たくない)

血汗涙

血汗涙ミュージックビデオよりー目隠し

血汗涙

血汗涙ミュージックビデオよりーテヒョンの悪魔の羽

血汗涙

血汗涙ミュージックビデオよりー悪魔とのキス

そして、これが冒頭の「花様年華」期ミュージックビデオとどう関連するのか!?というのを解説してくれているのが、日本語「血汗涙」のミュージックビデオです。

冒頭の「花様年華」期のミュージックビデオ との関連で、「成長痛」を感じながらも「青春」の甘い誘惑から脱し、成熟への道を、それぞれの方法で進むメンバーが描かれます。

血汗涙

血汗涙日本語版ミュージックビデオよりージョングクの羽の後は成長痛を意味する

血汗涙

血汗涙日本語版ミュージックビデオよりー卵の殻を破るジョングク

花様年華期のミュージックビデオで父親を殺したテヒョンは、まさに自分を押さえつける象徴であった存在を殺し、成長への道を模索しますが、この「血汗涙」のミュージックビデオの中では、その罪悪感から、うまく成長できない様子が象徴的に描かれます。

血汗涙

血汗涙日本語版ミュージックビデオよりー部屋(卵)から出られない様子

しかし、最後は自分なりの成長の方法を見つける様子(屋上に出る)が描かれています。

血汗涙

血汗涙日本語版ミュージックビデオより

また、この中でも、ジンは成長に抵抗していましたが、テヒョンを殴るシーン(テヒョンの成長を抑圧することを象徴)の最後で「ごめん」と謝り、自らの過ちに気が付きます。

血汗涙

血汗涙日本語版ミュージックビデオよりーテヒョンを殴るジン

血汗涙

血汗涙日本語版ミュージックビデオよりー自分の殻が破れるジン

そして、最後のガソリンスタンドの車のシーン。
ジンは車を走らせ、先に進む様子が見られます。

血汗涙

血汗涙日本語版ミュージックビデオよりーガソリンスタンドにてトラックを走らせるジン

LOVE YOURSELF期のミュージックビデオ

LOVE YOURSELF Highlight reel”起承転結”

これまで見てきたように、メンバーそれぞれの苦悩と、それぞれの方法で苦悩と向き合い、成長しようとする姿が様々な視点から描かれてきました。
成長とは苦痛を伴い、時に残酷さを伴うものですが、この残酷さを受け入れられないジンが、メンバーを救おうとタイムリープを繰り返していたことが「LOVE YOURSELF Highlight reel”起承転結”」のショートムービーで明かされます。

映像は、花様年華期ムービーで事故に遭ったジョングクのその後の病院のシーンから始まります。
そして、この映像の最後では、以下のように語られています。

時間を戻すことができるなら、僕たちはどこに戻るべきだろうか
その場所のたどりついたら、全ての間違いと過ちを正し、
幸せになることができるのだろうか
数えきれないほど多くの季節を繰り返しても、たどり着けない場所がある
結局向き合わなければならないのは、昨日とは違う嵐
その真ん中を突き進んでいくこと、恐れずに愛するということ
ためらいと別れること
僕自身として生きていくということ

メンバーを救うべく、タイムリープを繰り返しながらも、次第に疲れていくジンの顔が見て取れます。(繰り返し「服=ペルソナ」を着替えていることも注目)
すなわち、タイムリープを繰り返しても、結局はうまく行かなかったことが分かります。

そして、ここで新たに出てくる女の子たちとメンバーたちの関係も意味があります。
ここでは、女の子たちとの関係を通して、暗い過去を背負い自分を受け入れられないメンバーたちを表しています。

自分を受け入れられない=自分を愛することのできないメンバーたちは、本当の自分の気持ちを伝えられず、次なる成長のステージに進むことができないでいるのです。

スメラルドフラワーショップのブログ

物語を紐解くカギで、もう一つ忘れてはならないのが「スメラルド」という花です。

:: Flower Smeraldo :: : 네이버 블로그

Highlight reelのムービーの公開と同時期に、突然現れた上記のブログ記事。
公式からは全く何の説明もないものでしたが、実在するかのように、花屋のブログ記事がアップロードされ、そこでは「スメラルド」という花について語られています。
ここでは、スメラルドにまつわる、悲しい伝説が紹介されました。

醜い容姿を持った男は人と交わることなく古城で暮らしていたが、ある日、ある女性に好意を抱くようになる。
彼女のためにスメラルドの花を育てたが、自分の姿に自信を持てず自分の思いを伝えられないまま、女性は病気でこの世を去ってしまった。

また、同様のブログにて、その花屋にどうやらジンと見られる男性が訪れた様子が分かる記載がありました。
先ほどのHighlight reelの動画で自分の思いを告げられなかったジンとリンクします。

なお、LOVE YOURSELFのカムバック期には以下のように、スメラルドの花束を持つジンの様子がポスターになっています。

BTS公式Twitterより

Euphoria : Theme of LOVE YOURSELF 起 Wonder

そんな状況が一転するのが、このEuphoriaのコンセプトムービーです。
このムービーは、「花様年華 on stage:prologe」の最後、海に飛び込むテヒョンのシーンから繋がっています。
ここでは、テヒョンの、父親を刺し血の付いた手に包帯がまかれていること、手を広げ羽ばたこうとしているジョングク、楽しそうに走る7人の姿が印象的です。

euphoria

Euphoriaミュージックビデオよりー包帯の巻かれるテヒョンの手

またこの動画の中で、ジョングクは、これから起こりうる辛い人生ではなく、明るい未来をイメージしている様子が描かれています。

このビデオでは、お互いの傷に気が付き(お互いの弱さをさらけ出し)、お互いを支え合う7人の姿が描かれます。
そして、それまで悲劇的だった結末が、どんどん良い方向に反転していきます。
最後、台の上に上り、海に飛び込むのが、ここではテヒョンではなく、ジンに変わっています。

そして、何かを悟ったように微笑むジン。

FAKE LOVE

そして、この次に来るのが、「FAKE LOVE」のミュージックビデオです。
このミュージックビデオは、お城のような場所で、メンバーそれぞれが苦悩と戦う様子が描かれます。
ミュージックビデオの冒頭には、スメラルドの花が、瓶に入った様子も見て取れます。
先ほどの、スメラルドの伝説を思い出すと、古城に閉じこもり自分の容姿に自信が持てず愛を伝えることのできなかった男とリンクします。

fake love

FAKE LOVEミュージックビデオより

「FAKE LOVE」のミュージックビデオをより理解するには、先だって公開されたオフィシャルティーザーをまずご覧ください。

以下はオフィシャルミュージックビデオ(Extended ver.)


このミュージックビデオでは、自分を愛することのできないメンバーが描かれています。
幸せだった青春時代にとらわれ、先に進めないジンをはじめ、過去の呪縛や孤独に苦しむメンバー。
大丈夫なようにふるまっていても(=「FAKE LOVE」)、自分を愛することのできないメンバー。
そんな中、ジョングクだけが、鍵の入った箱を受け取ります(オフィシャルティーザーより)。

fakelove

FAKE LOVEティーザーより

そして、走り出し、メンバーを救いに行こうとするジョングク。

このカギは、自分を受け入れ、そんな自分の弱さをさらけ出し、他者と交わること(他者に助けを求める)、だとされます。
なお、テヒョンのソロ曲「singurality」では、「自分は大丈夫なようにふるまい、独りよがりになり、孤独を強める」様を表現しています。

自分を受け入れ、自分を愛することが、成長へのプロセスであるということです。
ジョングクだけが先にこのカギを受け取ったのは、先ほどのEuphoriaのムービーで、唯一、青春の先にある未来を肯定的に思い描いた人物であったことともつながっています。(橋=未来を意味する、の下で両手広げ羽ばたくジョングク)

euphoria

Euphoriaミュージックビデオより

このFAKE LOVE及びEuphoriaには、「青春と別れを告げ、大人への道を進むには、自分を愛すること、受け入れることから始める必要がある」というメッセージが込められています。

また、自分を愛することで、他者へも愛を与えることができるようになり、さらに、そのようにして愛を与えられた者は自分自身を受け入れるきっかけを得ることができるのだ、ということも伝えています。

そのことから、私たちは一人では生きていけない、他者とのつながり、他者からの愛や助けなしには生きていけないのだということも示唆しています。(実はこれは「DNA」で手をつないでいるメンバーの振り付けにも表されていると言います。)

DNA

DNAミュージックビデオより

Euphoria

Euphoriaミュージックビデオより

これは、Euphoriaで7人が横一列に並んで、微笑むシーンからも想起されますね。

なお、このFAKE LOVEのカムバック時の歌番組で、 Dr. James Doty「Into the Magic Shop」という書籍の一説が画面に映し出され、また、オフィシャルティーザーの冒頭でも紹介された、この「Magic Shop」を理解することで、上記のFAKE LOVEへの理解がより深まる仕組みになっています。

”Magic Shop”とは、恐れをポジティブな態度に変換する心理学的な技術である

fake love

FAKE LOVEオフィシャルティーザーより

LOVE YOURSELF 結 Answer ‘Epiphany’ Comeback Trailer

ジンのソロ曲Epiphanyのカムバックトレイラーの映像では、ジンが、自分の部屋(卵の殻)から歩み出る様子が描かれています。

部屋の外に出ては、落胆して帰宅し、また外に出ては雨に打たれうなだれるシーンが印象的です。

 

Epiphany

Epiphanyカムバックトレイラーよりー途中、雨が反転する

しかし、最後には、赤い日記帳を見て、何か意を決したかのように身支度をし、また外に出ていくジン。

Epiphany

Epiphanyカムバックトレイラーよりー鏡を見て部屋を出るジン

そして、映像の最後には以下のような独白。

自分を探す旅の最後にたどり着いたのは、再び元の場所
結局、探すべきものは全ての始まりであり、
道しるべは魂の地図
誰にでもあるけれど、誰にも探すことのできないそれを
僕はこれから見つけたい

つまり、先ほどの動画内で、外に出ては雨に打たれ、辛いことにやうまく行かない自分に出くわす…それ繰り返しながらも、少しずつ前に進んでいく、そうして大人になっていく様子が描かれていますが、そのプロセスには、この独白のような気付きがあったのだと読み取れます。

「探すべきものは全ての始まり」「道しるべは魂の地図」、つまり、自分自身と向き合い、自分を受け入れて、心の声に耳を傾けて先に進んでいこうという悟りを開いたのだと言えます。

ここで思い出したいのが、RMで2018年に行った国連でのスピーチ。

僕たちの初期のCDアルバムのイントロに「9歳か10歳のとき 僕の心臓は止まった」という歌詞があります。振り返れば、他人が僕のことをどう思っているか、どう見えるかを、心配し始めたのが、その頃だったと思います。
夜空や星を見上げて空想することをやめ、他人がつくりあげた型に自分を押し込もうとしていました。自分の声を閉ざし、他人の声ばかり聞くようになりました。誰も、僕自身でさえ、自分の名前を呼びませんでした。心臓は止まり、目は閉ざされました。
でも、僕には音楽がありました。自分の中で小さな声がしました 「目を覚ませ!自分自身の声を聞くんだ」。それでも 音楽が僕の本当の名前を呼んでくれるまで 長い時間がかかりました。
(中略)
昨日、僕はミスをしたかもしれません。でも、過去の僕も僕には変わりありません。今の僕は、過去のすべての失敗やミスと共にあります。明日の僕が少しだけ賢くなったとしても、それも僕自身なのです。失敗やミスは僕自身であり、人生という星座を形作る最も輝く星たちなのです。
僕は 今の自分も 過去の自分も 将来なりたい自分も すべて愛せるようになりました。

また、「Epilogue:Young Forever」の中で「完ぺきなものなんてありえない」と語ったRMの歌詞ともリンクします。

「子供」から「大人」へと成長する過程で誰もが経験することを、メッセージとして込めているのです。
同時に、周囲の批判や大人たちからの抑圧をはねのけ、自らの音楽を守り抜き、向き合い、発展させてアーティストとして成長するBTS自身の葛藤をも描いているのではないかということが、ここから分かります。

参考:「Spring Day」ミュージックビデオ

ここで、この花様年華の一連のストーリーと完全にリンクしているわけではないように見えるけれど、ストーリーを理解するうえで重要になってくるのが「Spring Day」のミュージックビデオです。

血汗涙の苦悩する様子から、Euphoriaで一気に状況が反転するまでの間に少し飛躍を感じたとしたら、このSpring dayが間に来ることで理解できるのかと思っています。

omelas

Spring Dayミュージックビデオより

Spring Dayのミュージックビデオで出てくるキーワード「Omelas」がこのミュージックを理解するカギになります。

アーシュラ・ル=グウィンの小説「オメラスを歩み去る人々」に着想を得ています。

オメラスとは「理想郷」とされる架空の都市で、この都市では人々は苦しむこともなく精神的にも物質的にも豊かに暮らしています。
しかし、そのオメラスの豊かさは、ある一人の子供の犠牲の上に成り立っていたのです。
その子は知能が低く、まともに世話もしてもらえないまま不衛生な地下室に閉じ込められています。
オメラスの平和を守るためにはその子を犠牲にし続ける必要があったのです。
また、そのことはオメラスに暮らす人々も知っています。
都市全体の幸せを守るためには一人の犠牲は仕方がない、として、知っていて無視している状態にあります。
この、オメラスの人々は、本来自分で引き受けなければならない苦しみを直視せず、空虚な幸せを送っているのです。
しかし、オメラスに暮らす人々の中には、この事実を知ってオメラスを去る人々もいます。
オメラスを去れば、再び荒野が待っており、様々な苦しみが襲ってきます。
この「オメラスを歩み去る人々」は、子供を犠牲にして成り立つオメラスに疑問を抱き、自分の意志で外に出ていき、人生を生きる人を表しています。

そして、「Spring Day」では、荒野を歩くBTSの7人の姿が映し出されます。

springday

Spring Dayミュージックビデオより

「オメラスを歩み去る人々」の中で、オメラスを去る人々についてこう描写されています。

彼らはオメラスを後にし、暗闇の中へと歩みつづけ、そして二度と帰ってこない。彼らがおもむく土地は、私たちの大半にとって、幸福の都よりもなお想像にかたい土地だ。私にはそれを描写することさえできない。それが存在しないことさえありうる。しかし、彼らはみずからの行先を心得ているらしいのだ。彼ら—オメラスから歩み去る人びとは。

オメラスを去る人々は、自らの行き先を知っている。
これから行く先は、たとえ険しい道であったとしても、空虚や嘘でない、自分自身にとっての本当の幸せを見つけるための道のりである・・・そしてその道のりは、彼らの「心の地図」(魂の地図)に従っているんだ、と先ほどまで述べた花様年華のストーリーに合致する背景が見えてきました。
このミュージックビデオでは、幸せだった青春時代から、辛い経験を経ても自分と向き合い、成長していくことを決意したBTSの姿が描かれているのですね。

なお、この「Spring Day」には、当時大きなニュースとなった「セウォル号事件」へのメッセージも込められていると言います。
苦しむ人々の痛みを忘れず、先に進んでいく。彼らの春の日とは、「誰かの悲しみを忘れない時間」である、そういったメッセージも込められています。

参考:IDOLミュージックビデオ

ちなみに、IDOLでは、自分を愛することを学んだ7人が、周りにどう思われようと自分の道を進む、とした自分を発見する様を歌っています。
しかも、出てくる動物や巨人、メンバーが着ている服のデザイン全てに意味があります…

IDOLと呼んでもいい、ARTISTと呼んでもいい。
どっちでも僕は気にしない。

好きなようにやる
俺は自分が好きだからな
自分自身が大好きさ
俺の中には数十 数百人の俺がいる(→顔がいっぱいのミュージックビデオ)
今日はまた別の俺を迎えてもどうせ全部が俺なんだから
僕は自分自身が一番好きなんだ
大丈夫俺はこの瞬間が幸せなのさ
You can’t stop me lovin’ myself

まとめ

以上、ここまで、自分を受け入れられない、成長することを拒否するメンバーの葛藤から、自分を愛し、成長する道を見つけたメンバーの道筋をご説明しました。

この一連のストーリーが花様年華のストーリーです。

花様年華のストーリーには、以下の2つの軸があると考えます。

  • 「子供」から「大人」に成長する際の葛藤と、「自分を愛すること」によりそれを乗り越えること
  • BTSとして成長するメンバー自身の思い、哲学

そして、成長する道は、自分自身の「魂の地図」に従うことで見つけることができます。
その「魂の地図」とはいったいどのようなものなのか?を説明し、BTSメンバー自身の魂の地図を表しているのが、次に続く「MAP OF THE SOUL」なのです。

MAP OF THE SOULの詳細については、こちらの記事で解説しています。

BTS「MAP OF THE SOUL」とユング心理学の関係性
BTSの楽曲を理解するうえで欠かせないストーリー「花様年華」に続くストーリーである「MAP OF THE SOUL」について、ユング心理学の「心の地図」の概念をご紹介しながら、ミュージックビデオに隠された意味を紐解き、BTSが私たちに伝えたいメッセージを解説します。

なお、上記で挙げた以外のミュージックビデオや楽曲にも、この花様年華のストーリーに関連する部分、自分を愛すること、成長すること、という哲学がところどころに散りばめられています。(Fire、N.O、Not Todayなどなど…)

本当に芸が細かいです…これを全部理解するには、先ほど述べたような文学、宗教、心理学などの知識が必要になり、ものすごいインテリ集団だな、ビッグヒットは、と感心しっぱなしでした。

また、RMを始めとしたメンバー自身の言葉の中には、この哲学をしっかり理解したうえで活動しているんだなと分かる言動が多々あることも、鳥肌ものでした。

ジミン:もし自分自身に対してネガティブな感情を持ったり自己評価が低かったり自分を大切にしていないと、他の人への言葉や態度も良くないものになってしまう。だから自分を愛することはとても大切だと気づき、それが僕の扉を開けてくれた。このことは真理だと思うので皆に共有したい。

RM:人生は、自分を愛する方法を見つけるための旅だと思います。
人は100%完璧になることなんてできません。だから、人生の全ての過程は、自分を愛する方法を見つけることだと思います。それが全てです。

本当にすごすぎて怖い、この子達・・・!!!

コメント

  1. めりこ より:

    花様年棒の始まりはまだ10代20歳そこそこで、そこから始まる想像を超える今の自分達の葛藤や恐怖をも一貫した信念で描き続けるBTSの世界観に震えました。
    ほんとこの子ら何者、、、凄すぎる。
    そして、この解説が更にインテリで感嘆しました。
    哲学書を読んで聞いて観ている気分です。
    久々心が震えました。

    • めりこさん、コメントをありがとうございます!
      私も、本当にHYBE(Bighit)は壮大なストーリーを仕掛けてくるな、と、とても感動しました。
      解釈も様々ありますが、こうしてアレコレ考える時間も楽しいですよね。

  2. hana より:

    これはご自分ですべて書かれましたか?
    先輩方のを参考にされてますよね⁈
    ちゃんと記載した方がいいかと思います。

    • コメントありがとうございます。
      花様年華については、考察に触れたことのあるARMYさんならお分かりになるかと思いますが、2015年から世界中のARMYにより考察されており、ストーリーなどは既に通説化しています。
      公式から出ているウェブトゥーンやNOTEにも記述があります。
      私の記事ではこうした通説や公式から出ているストーリーに則り、その上で独自の解釈を混ぜながら解説をしております。
      念のため、私が参考にした通説をまとめた英語の定番サイトを掲載いたしました。日本語で記載されている他ブログも大体はこの通説に則っていると思います。

  3. chimi より:

    はじめまして✨
    IDOLの衣装の意味を知りたくてコメントさせていただきました!
    考察とても参考になりありがたいです。
    FAKE LOVE、film outあたりのジングクの考察がわたしのなかでよくわからず、早く続きのnoteが読みたいです〜

  4. グテオシ より:

    とても分かりやすく楽しく読みました。これからも色々と考察について知りたいと思いました。オプチャとかはお持ちではないですか?

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