Film Out考察!花様年華から繋がるストーリーと魂の地図(MAP OF THE SOUL)

BTS

こんにちは!さこまよ(@SacchanOT7)です。
2021年4月2日、いよいよ公開されましたね!
BTSの新曲で、日本語曲「Film Out」のミュージックビデオが公開され、音源が各種配信サービス等でリリースされています。

今回「Film Out」のミュージックビデオのティーザーが公開されたとき、その構成が2018年にリリースされたBTS「FAKE LOVE」のティーザーと似た構成になっていて、一部ファンの間では「花様年華」のストーリーがまた始まるのでは!?との憶測が飛んでいました。

今回は、花様年華のストーリーに基づいて「Film Out」の考察をしたいと思います。
もう花様年華のストーリーを知っているよ、という方は、以下の目次から「Film Out」の考察に飛んでいただければと思います。

花様年華のストーリーと「魂の地図」について

今回公開された「Film Out」のミュージックビデオを見て、私も確信しました!
これは間違いなく、「花様年華」のストーリーですね。
「花様年華」とは、ざっくりいうと「悲劇的な結末を迎えるメンバーの未来を変えるべく、ジンがタイムリープを繰り返して、過去に戻り、過去を変えることで未来を好転させようとする」物語です。

しかし、 結局、何度繰り返してもジンのタイムリープはうまく行かず、タイムリープを終わらせるには「魂の地図」が必要になることに気が付き、ジンは心の成長を遂げようとします。

詳しくは以下の記事を見てください。

徹底解説!BTS「花様年華」のストーリー
BTSの花様年華のストーリーをミュージックビデオを見ながら解説します。花様年華は子供から大人への成長の過程で経験する葛藤を乗り越え、自分を愛することを学び、成長していく様を表したストーリーです。また、BTS7人のアーティストとしての成長についても関連があります。

なお、「魂の地図」とは、ユング心理学の「心の地図」の概念から来ています。
「心の地図」とは、人間の心の構成を表したもので、「ペルソナ(表向きの自分)」と「シャドー(自分が受け入れたくない自分)」、どちらも含み、それらが「エゴ(自我)」を構成しているという考え方です。
ユング心理学とBTSの関連性については以下の記事をご参照ください。

BTS「MAP OF THE SOUL」とユング心理学の関係性
BTSの楽曲を理解するうえで欠かせないストーリー「花様年華」に続くストーリーである「MAP OF THE SOUL」について、ユング心理学の「心の地図」の概念をご紹介しながら、ミュージックビデオに隠された意味を紐解き、BTSが私たちに伝えたいメッセージを解説します。

「FAKE LOVE」や「血汗涙」のミュージックビデオでは、こうしたペルソナとシャドー、どちらの自分も、自分と受け入れ、自分を認めてあげる(愛する)ことで、心の成長を遂げる、というコンセプトが根底に流れていました。

「LOVE YOURSELF」の思想は、BTSが最も大切にする哲学で、「これがすべてだ」とリーダーのRMを始めとしたメンバーが口々に言っていますね。

(詳しくは上記記事で・・・!)

したがって、BTSのミュージックビデオを理解するには、この「心の地図」と「LOVE YOURSELF」の考え方をまず念頭に置いておく必要があります。

花様年華のストーリーには続きがあった!タイムリープをしているのはジンだけじゃなかった!?

花様年華のストーリーは、一見、「Euphoria」や「Epiphany」のコンセプトムービーで過去が好転し、完結したかに思えました。
しかし、「Euphoria」のラストのテヒョンの意味深な表情など、引っかかる点がいくつか残されていました。

BTS (방탄소년단) 'Euphoria : Theme of LOVE YOURSELF 起 Wonder'
BTS (방탄소년단) 'Euphoria : Theme of LOVE YOURSELF 起 Wonder'credits:Director : YongSeok Choi (Lumpens)Assistant Director : WonJu Lee (Lumpens)Director of Photogr...

また、今回の「Film Out」を理解するうえで決定的に重要であり、2020年9月に公開されたこちらのムービーもご覧ください。

今回の「Film Out」のティーザーが公開され、再度見返してみたところ、どうやら、ジンだけではなく、ジョングクもタイムリープをしているのでは?ということが分かりますね。
小説「NOTES」では、ジョングクが車に轢かれた際、不思議な猫に遭遇しています。
また、この動画で出てくる不思議なオッドアイの猫は、ジンにタイムリープの力を与えたものであることから、ジョングクもここでタイムリープの力を手にしたと言えます。
また、テテは、自分の運命が変わったことに気が付き、それがまた、ジンの行いによるものではないのかと、明らかにジンの行動に気が付いている様子ですね。そして、ジンに救いの手を差し伸べようとしていましたが、ジンはそれを拒みます。

「Euphoria」のシーンの後が、この動画で描かれているわけです。

それでは、この「BTS Universe Story」の動画と、今回の「Film Out」のミュージックビデオを参照しながら、今回の「Film Out」の考察と花様年華のストーリーの続きを見ていければと思います。

 BTS Universe Story 花樣年華 ‘MAP OF THE SOUL’のコンセプトムービーの振り返り

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BTS Universe Story花様年華 Map of the soulのムービーより

動画は、ナムジュンが部屋ごと爆破されて亡くなってしまうところから始まります。
タイムリープで駆けつけるも間に合わず、途方に暮れるジン。

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BTS Universe Storyより

こんなナムジュンの運命を変えようと、ジンは、「久しぶり。ナムジュンの運命を変える方法を教えて」と言って猫に話しかけます。
ジンはこの猫と出会うことによって、ジンはタイムリープをする力を得たのでした。
そして、猫は「『魂の地図』を見つけることで解決できる」と教えてくれます。

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猫の目の色が違う

そして、ジンは別の次元へ誘いこまれ、RUNのミュージックビデオで見たシーンにタイムリープします。しかし、そこにいるのはジン以外の6人。ジンが6人に触れようとしても触れることができません。

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BTS Universe Storyより-周りのものが浮かび嵐に

そして、場面が変わる際の、嵐。
そのあと、今度はRUNミュージックビデオでも出てきた、トンネルをトラックで走るシーン。ここでも、ジンは6人に触れることができません。
その後、草原を6人が駆け抜けるシーンや、コンテナの中でのパーティの様子もフラッシュバックします。

そして、このコンテナでのシーンの、ジョングクとジンは目が合っていますね。
このシーンはRUNのミュージックビデオに出てくるシーンと同じです。
そして、これは「FAKE LOVE」の冒頭、扉を閉めるジンの顔と、閉まる扉の向こうにいると思われるジョングクの顔が向かい合っている描写がありましたが、それを思い起こさせます。

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コンテナの扉が開くシーン。FAKE LOVEの冒頭とリンク

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FAKE LOVEミュージックビデオより

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BTS Universe Story 2022年7月24日

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FAKE LOVEミュージックビデオより。ジンの顔の後に出てくるジョングク。扉が閉まる

なお、「FAKE LOVE」では、ジョングクだけがカギを受け取り、他のメンバーを助けに行こうとしている描写がありました。(「花様年華」解説記事参照)

「FAKE LOVE」では、ジンを睨むジョングクをシャットダウンするかのように、ジンが扉を閉めていましたが、こちらのBTS Universeの動画では、ジンが扉を開け、向こう側にいるコンテナの中のジョングクと目が合っています。

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BTS Universe Story-扉を開ける

またシーンが変わり、ジンが、原っぱにある扉を開けると、今度はそこはテヒョンが父親を刺しているシーンに繋がります。これは「I NEED U」や「花様年華プロローグ」の動画にもあったシーンですね。

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BTS Universe story 2022年5月22日

しかし、その後、テヒョンがいきなり何かから目覚めたように驚き、手を見ると父親の返り血は消えており、テヒョンの過去が変わったことを示唆しています。
そして、それは、ジンの行動によるものだということが分かります。

そして、RUNなどでもできた海の上にある台で、ジンの横に座るテヒョン。
ジンのポケットに、7人で映る写真を忍ばせます。
(7人が全て健在で生きている証拠)

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BTS Universe story

ここから、明らかにテヒョンはジンのタイムリープを知っており、しかもジンのタイムリープのおかげで自らの過去が好転したことを知っているように見えます。
そして、また、タイムリープから抜け出せず、疲弊しているジンを労うかのように肩を抱きますが、ジンはそれをはねのけます(助けはいらない!)。
ジンは一人ですべてを抱え込み、疲弊し、また、魂の地図を得るために楽しかった記憶まで犠牲にし、冷たい人間になろうとしていました。

BTS Universe Story-車にひかれるジョングク 2022年5月22日

そしてまたシーンが変わり、車に轢かれるジョングク。
轢いた車は、あの例の7人が乗っていたジンのトラックのように見えます。
小説では、ジョングクも、それに気が付いていました。
ジンも、ちょうど同時刻に車をぶつけています。

そして、再び現れる猫。
「・・・それでも生きたいの?」とジョングクに聞きます。

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車に惹かれたジョングクと猫との出会い

この猫との出会いは、ジョングク自身もタイムリープの力を手にしたことを意味していると思います。

ここで注目したいのが、日付。2022年5月22日は、先ほどのテヒョンの運命が変わった日と同じなのです。
小説を読むと分かりますが、ジンはテヒョンや他メンバーの運命をタイムリープで変えることができても、ジョングクの交通事故の運命だけは変えられなかったのです。
つまり、このジョングクのタイムリープと、ジンのタイムリープは別物なのではないかと思えました。

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ジンの父親のノート?ー2022年8月3日

そしてまたシーンが変わり、扉を開けるジン。
そこには1冊のノートが。
何も書かれていないノートはジンが触れると文字が浮かび上がりました。

なお、小説「NOTES」においては、ジンの父親もタイムリープの能力を持ち、タイムリープを繰り返しましたが結局一人では運命を変えられず、諦めてしまっていました。
ジンが父の書斎の奥に残されたノートを見つけ、父が同じような経験をしていたことを知ります。
ジンは、自分が大きな間違いを犯していたことを悟ります。
オッドアイの猫と交わした契約は、全ての過去の過ちを正すために、自分の記憶を消すことでした。
そのこと自体が大きな間違いだったと気づいたのです。

魂の地図を見つけたジン

そして、このシーンで、ジンは本当の「魂の地図」とは何かを悟りました。
自分が犯した全ての過ちを正すために過去を変えなければならないと考えていたことこそが、間違いだったのです。
自分の犯した全ての過ちも、自分自身の一部として受け入れること。
自分が救えなかったたった一人の人、すなわち自分自身を許し、理解し、愛すること。
それが、自分自身を救う唯一の方法だったのだと、悟ったのです。

また、ここでいう「魂の地図」とは、ユング心理学の考え方も取り入れると「自分のそれまでしてきた選択、過去、記憶からなる自分自身の心の在り方」ですので、「魂の地図を見つける」とは、「自分の過去を受け入れ、自分を愛する」こと、すなわちLove Yourselfだと解釈できます。

部屋に戻ったジン。足元には写真=記憶が並べられている。

魂の地図が何かを悟ったジン。これまでの記憶を取り戻します。
そのことは、足元に並べられた写真から示唆されます。
そして涙を流す。

教室の隅で、自分が事故に遭う様子を描くジョングク

そして、次のシーンでは、楽しそうに教室で遊ぶ高校生時代のメンバーたち。
時間がさらに巻き戻っています。
一方、教室の隅で、浮かない顔をして、事故に遭った自分の姿を描いているジョングク。

ここでこの動画は終わります。
花様年華「NOTES」では、ジョングクは、自分をひいた車を運転しているのがジンだったと疑っています。
疑念を深めたジョングクは、自分以外のメンバーが何かを知っていそうなことからも、疎外感を深めていきました。

※追記含む
私は最初、冒頭でも紹介した「Euphoria」の動画では、事故に遭ったジョングクの足も治っており、メンバーたちの過去が好転して、それを見たジョングクは安堵の表情を浮かべている様子から、ジンだけでなく、ジョングクもタイムリープを行い、過去を変えているように思っていました。
また「FAKE LOVE」で一人だけカギを受け取り、成長への道を進み始めたジョングクは「魂の地図」を見つけ、そのタイムリープから抜け出し、状況を改善できたのだと読んでいました。

ですので、この、2020年9月に公開されたBTS Universe Storyの最後のシーンは、それまで明らかになった「Euphoria」や「FAKE LOVE」での解釈と少し合わないのです。

小説を読んでも、最後のシーンで一人時空に取り残されているジョングクが描かれています。
そうなると、ジョングクがタイムリープを行う世界は、まだハッピーエンドには至っていない、ということになります。
また、この時点ではどうやら、ジョングクは自分の境遇をいまいち理解できていないようにも思えます。

「Film Out」の動画考察

どうにも釈然としないな~と思いながらいたところ、今回の「Film Out」の動画が公開されました。

花様年華のタイムリープのストーリーラインと、MAP OF THE SOULのBTS自身の心の成長のストーリー(シャドーとペルソナ、エゴなど)、どちらの軸も読み取れるように思いました。
この2つの軸は分けて考えるべきですが、リンクする部分もあります。

なお、こちらのミュージックビデオでは、やはりジン以外に、ジョングクもタイムリープをしているのが決定的になっているように見えます。
また、テヒョンについても、これまでの流れから、悪夢を通じてジンの奮闘に気が付き、ジンを救うキーパーソンになりうる示唆があったことから、そうした関連の描写が見られます。

また、「Film Out」のティーザーと対になっていた「FAKE LOVE」のティーザーとの関係から、再度「FAKE LOVE」を見てほしいのですが、ここでのジョングクの役割とジンの役割が一部入れ替わっているように見られる部分もあります。

fake love

FAKE LOVEでメンバーを助けに行くジョングク

Film Outでタイムリープした後に走り出すジン

それでは、一画面ずつ見ていきたいと思います。

花様年華のストーリーラインで読み解く「Film Out」

filmout

Film Outミュージックビデオー冒頭のジョングクがいる部屋

まず、ミュージックビデオ冒頭のこちらの部屋ですが、この部屋はテーブルや椅子などの家具にカバーがかかっており、今は使われていない部屋のようです。

冒頭に、部屋に一人たたずむ姿は「FAKE LOVE」のジンと重なります。

fake love

FAKE LOVEの冒頭のジン

また、部屋は過去の一連のBTSのミュージックビデオを見ると、「心の中」を表しているという見方もあります。

このシーンで歌詞は「浮かび上がる君は、あまりに鮮やかで、まるでそこにいるかと手を伸ばすところでふっと消えてしまう」と歌っています。

同じ部屋にテヒョン

そして、その次、画面が切り替わり、ジョングクがいた部屋と同じと思われる部屋にテヒョンが現れます。
注目したいのが、テヒョンの前にあるテーブルの上にある砂時計。

よく見ると、横向きになっています。
砂時計が時間の流れを意味するとすると、横向きになった砂時計は、「時間が止まっている様子」を表していると取れます。

次に、ジンが先ほどジョングクとテヒョンがいたと思われる部屋に現れ、鏡のように、家具などの配置が反転している部屋を、窓越しに見ています。
先ほど、ジョングクがいた部屋に後からジンが来た、ということは、ジョングクを追ってジンが来た、とも捉えられます。

鏡になった部屋には、「ジンを含む」7人のメンバーがいます。
このメンバーいる部屋は、今ジンがいる手前の部屋と対比すると、「過去」を表します。

メンバーがいる部屋を窓の向こう側から見ると、同じ本棚が窓の周りにあることが分かる

一方で、このメンバーがいる部屋は、先ほどのBTS Universe Storyとのつながりで行くとタイムリープを行ったジンが作り上げた、別に存在する世界「パラレルワールド」と取ることもできます。
だから、ジンが向こう側にも、こちら側にもいるんですね。
また、「パラレルワールド」とも取れるもう一つの理由が、ジンがいる「こちら側の部屋」とメンバーがいる「あちら側の部屋」の家具が完全に一致しておらず、椅子の色などが白と黒で異なることなども挙げられます。

そして、ジンがタイムリープを繰り返すことで、そのたびに別の歴史をたどる世界「パラレルワールド」ができているとしたら、同時にたくさんのパラレルワールドが並行して存在することになります。

後に出てくるこのドアは、それぞれの世界が並行して存在することを表すという見方もあります。ドアの奥は、タイムリープによって作られた「パラレルワールド」が存在している、ということです。
ジンが、必死で何かを探しているように見えますね。
これは、時空に迷い込んでしまったジョングクを探しているのではないかと思いました。
※小説の最後で時空を漂うジョングクの描写で終わっていることから、その続き?

ジンがタイムリープをしていると分かる場面は、「こちら側」の部屋にいるジンが、砂時計を動かす部分で分かります。
砂時計を反対にしていることから、時間を巻き戻していると見ることができます。

そして次のシーン。
あちら側にいるジョングクが、こちら側のジンに気づいたような顔をしていますね。
先ほど説明した、「FAKE LOVE」や「RUN」でもジョングクはジンが自分を轢いた犯人なのではないかと疑っており、その様子とリンクします。

また、BTS Universe Storyで、事故に遭った際に猫に出会ったジョングクはタイムリープの能力を授かったと見られ、そのために時間軸の変化に気が付いたのかもしれません。

ジンに気づいたジョングクが、自分の目の前のテーブルにある砂時計を見たとき、砂時計は終わっています。
これは、ジンがタイムリープを始めたことで、ジョングクがいる世界が変わってしまうことを意味しているのか、ジョングク自身がタイムリープの能力を授かったことで、ジンの持っている砂時計とは別の時間軸でジョングクが動き始めたという意味なのか、どちらなのでしょうか。
※追記:私は後者ではないかと思います。ジンがいくら頑張ってもジョングクの交通事故だけは防ぐことができなかったことから、ジンのタイムリープとジョングクのタイムリープは関係していない可能性が高いです。
そして、過去が変わったために、ジョングクをはじめ、あちら側にいるメンバーは消えてしまいます。

メンバーが消え、過去が変わり、新たなパラレルワールドが生じた証拠です。
砂時計が逆向きに動きます。

逆向きに動く砂時計

そして、タイムリープを行うと、窓の外から風が吹き込み、部屋が荒れます。
これは、FAKE LOVEの冒頭のシーンと同じです。

また、もう一つ、BTS Universe Storyの最後の謎が解けそうだと思ったのは、この章の最初で観たように、FAKE LOVEでのジンの役割と、ジョングクの役割が入れ替わっていることです。
BTS Universe Storyでは、最後、ジョングクが一人だけ浮かない顔で、自分の事故のシーンを描いています。

それは、今度はジョングクがタイムリープを行っていて、自我の中に迷い込んでしまっていることを表し、それに気づいたジン(ジンは既にBTS Universe Storyや花様年華の「Epiphany」で魂の地図の地図の存在に気づいている)がジョングクを助けようとしているのではないか、と読み取れます。

そうすれば、最後のつじつまが合う気がします。

また、黄色の中にいるテヒョンは、ジンがタイムリープを行ったあと、時空を移動し、過去が変わっている「象徴」を意味しているのではないかと思います。
なお、ジミンちゃんも黄色、の中にいるんですよね。

しかし、BTS Universe Storyで、テヒョンはジンのタイムリープに気が付いていますし、海に飛び込むシーンから、テヒョン自身もタイムリープを行っているとも取れます。どっちかな…
※追記:テヒョンはタイムリープではなく、あくまでもこちら側(タイムリープしていない世界)から、ジンのいる世界を見ていることから、ジンの行動を夢で悟っていて、救おうとしているという描写なのかと思います。

また、ジンの部屋が荒れ、タイムリープが行われた後、あちら側の部屋も同様に荒れていて、そこにはテヒョンが佇んでいます。

窓(鏡)越しにジンのいた「こちら側」の部屋をのぞいており、手を伸ばしますが、そこにはもうジンはいません。

なお、このラストの歌詞は、冒頭のシーンで流れる歌詞と全く同じ歌詞が繰り返されています。
「浮かび上がる君は、あまりに鮮やかで、まるでそこにいるかと手を伸ばすところでふっと消えてしまう」

そんなところから、テヒョンは、タイムリープに苦悩するジンを救いに来た、と読み取れます。
しかし、そこにはすでにジンはいなかった…

To be continued・・・!

というわけで次のMVに繋がっていきそうです。

なお、「血汗涙」のミュージックビデオでは、テヒョンは「悪魔=影」であり、自分の中の影と向き合えず成長できないジンを誘う(成長へと導く)役でした。

MAP OF THE SOULのストーリーラインで読み解くBTSの心の成長

さて、冒頭で、この「Film Out」には、花様年華のタイムリープのストーリーライン(先ほどの章で解説)と、MAP OF THE SOULのストーリーラインの、BTS自身の成長の物語の2つ軸があるのでは、と述べました。

MAP OF THE SOULについては、以下の記事を読んでいただくとお判りになると思いますが、私がそう感じた理由は、この「Film Out」のミュージックビデオを通して「光と影」の対比が目立つからでした。

BTS「MAP OF THE SOUL」とユング心理学の関係性
BTSの楽曲を理解するうえで欠かせないストーリー「花様年華」に続くストーリーである「MAP OF THE SOUL」について、ユング心理学の「心の地図」の概念をご紹介しながら、ミュージックビデオに隠された意味を紐解き、BTSが私たちに伝えたいメッセージを解説します。

例えばこちらの、鏡越しに向き合うユンギとホソク。
鏡は「自分を映す」もので、鏡を見ることは、「自分自身と向き合うこと」を意味します。

「MAP OF THE SOUL:7」のアルバムにおいて、ユンギは「Shadow」を、ホソクは「Ego」を歌いました。
ユング心理学において、自我(エゴ)は、シャドー(影)の部分とペルソナ(仮面)の部分を含み、シャドーは自分の受け入れたくない部分を、ペルソナは表に見せたい自分、を表します。

この心の在り方がユング心理学「心の地図」=MAP OF THE SOULであり、花様年華のストーリーラインのカギにもなる、「魂の地図」となります。

そして、自我を発達させるには、自分の中の嫌な部分と向き合い、自我に取り込むこと、シャドーとペルソナを統合させることによって達成されます。

自分の中のシャドーを受け入れ、自分を認めてあげること、愛してあげること(=LOVE YOURSELF)により、自分が成長でき、人を愛することもできるのだ、ということです。

Film Outのミュージックビデオの中の、ユンギ(影)と向き合うホソク(自我)は、すなわち、成長していることを意味しています。

また、冒頭のテヒョンのシーンで、明るい画面が急に暗くなり、真っ暗な顔のない影のテヒョンに切り替わることも、こうした、自分の中の光と影を表していると思いました。

さらに、Twitterにて話題の「ジンの後ろ姿が、ジンじゃない!!」というこちらの場面ですが、なんとなく、部屋の左側が明るいイメージなのに対して、右側が暗いイメージですよね。
先ほど冒頭で、部屋は「心の中」を表す、と言いましたが、この場面は、真ん中のRM(自我)と左側の「ペルソナ」、右側の「シャドー」が同じ心の中に同居する様、を表しているのではないかと思います。

そして、後ろ姿の偽ジンは、それを見つめるジンにとって、受け入れられないジン(自分と認めたくないジン)を表すのではないかと思います。

epiphany

Epiphanyのジンの部屋

その発想は、こちらの「Epiphany」の中のジンの心の中を映すであろうシーンからも想起されました。
画面の右側が暗く、うずくまっているジンがいますね。

BTSは7人が支え合って成長してきた、これからも7人で進む

「Film Out」のミュージックビデオの中では、青いバックに一列に並ぶ7人の姿がありました。

Euphoria

Euphoriaミュージックビデオより

同様に、状況が好転していく様を描いた「Euphoria」のミュージックビデオの中にも7人が笑顔で一列に並ぶシーンがありました。

ここからは、今後のストーリー展開の推測(半分私の希望)を含みますが、花様年華「NOTES」やBTS Universe Storyで、ジンの父親も同じくタイムリープを繰り返していたことは先ほど述べました。
ジンの父親は、一人でタイムリープに挑んで失敗し、タイムリープを諦めて冷たい人間になっていました。

しかし、BTSの場合は違いました。
ジンだけでなく、テヒョンなどの他のメンバーたちがジンを救おうと奮闘します。

ジンは、仲間との思い出を取り戻したことで、自分がひどい過ちを犯していたことに気が付きます。
ひとりだったら、父親と同じようにタイムリープを諦め、時間を巻き戻すことの代償となる「記憶」を失った冷たい人間になっていたかもしれません。

しかし、メンバーたちとの楽しい記憶を思い出し、自分自身を受け入れることこそが必要であったのだ、という「魂の地図」を見つけ、成長していくことができました。
まだ、「Film Out」の段階では、メンバー全員がハッピーエンドにはなっていませんが、「Film Out」のキーワードでもある「記憶」を取り戻す=「過去の、受け入れられない自分と向き合う」=「魂の地図」を見つけることで、メンバーどうしがお互いを助け合い、最後にはジョングクのタイムリープを終わらせることができるのではないかと思います。

また、「MAP OF THE SOUL:7」で「初心を思い出す」ことで、重圧の中「なんでこんな思いまでして歌手をしているんだろう」とくじけそうになった心を奮い立たせる、という意味を込めたBTSは、「初心=記憶」を大切にしたいと思っているのではないかと思います。

(「Film Out」リリース発表前後の時期、「Official Film Viewer」というマーチャンダイズが「思い出の詰め合わせ」として発売されましたね)

今後のBTSのミュージックビデオや音楽では、その花様年華のストーリーと並行して、BTSの哲学である「LOVE YOURSELF」を貫き、批判や差別に立ち向かい、自らの音楽を守り抜いていく・・・「ON」で、苦難に立ち向かい、力強く、自ら選んだ道を進んでいくという決意を歌ったBTSのこれからの物語をも、同時に表現されていくのだと思います。

そのためには7人が誰も欠けることなく、最後には「着陸」できるように、支え合って進んで行きたい、というメッセージもあるのではないかと思います。

まとめ

以上、「Film Out」のミュージックビデオについて、花様年華(BTS Universe Story)のストーリーラインと、MAP OF THE SOULに見るBTS7人の成長を表すストーリーラインの2面から解説しました。

非常に長くなってしまいましたが、それだけ、この4分弱のミュージックビデオにはたくさんのメッセージが込められているということですね。

また、このメッセージは私の考察であり、解釈も含むため、他にもいろんな解釈があると思います。

良い作品とは、色んな人に色んな解釈を与えるものだと思うんですよね。
「どの解釈が正しい!」という正解はなくて、皆が違う人生を歩む中、それぞれの人生経験を反映して、それを思い起こさせたり、それぞれが自分の人生に意味のある解釈を作品に与えることで、その作品がその人にとって大切なものになる。
一人一人が、作品を通して自分と向き合い、自分を知り、心が豊かになったり、成長することこそに価値があるのかなと思っています。
BTS側がこうした解釈の余地を残している意味合いもここにあるのかなと思っています。

そして単純に、意味が分からないから何回もミュージックビデオを見る、という再生回数増加にもつながっている点、ビッグヒット改めHYBE、さすがだなと思います。

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